COLUMN特集

2018.10.31バイク産業 バイク産業の神髄に触れられる「バイクのふるさと浜松」


日本の3大バイクメーカー誕生の地・浜松


ピアノや軽自動車、写真のフィルムなど、浜松市には日本で初めて開発された技術や製品が数多くあります。オートバイもその1つで、世界に名だたるバイクメーカー「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」の創業地でもあります。戦後間もない1946年。ホンダ技研工業(株)の創業者である本田宗一郎が、陸軍で使用していた無線機用の小型エンジンを改良し、自転車に取り付け試走したのが、浜松におけるオートバイ作りの始まりといわれています。


ライラックML(1948年 丸正自動車)



翌年の1947年になると、オリジナルエンジン「ホンダA型50cc」の開発に成功。当時のオートバイは現在のような組み立てられたものではなく、エンジンと走行に必要な部品をセットにして販売し、自転車屋が既存の自転車に取り付けるスタイルでした。この頃になると浜松では、多くのバイクメーカーが誕生。中小の鉄工所も加わり、昭和30年前後には40社ほどにまで増え、オートバイ製造の一大拠点に成長します。多くの技術者や職人の手により生み出された、「ドリーム号D型(ホンダ)」「ライラック(丸正自動車)」「ダイヤモンドフリー(スズキ)」「YAMAHA125(YA-1)(ヤマハ)」といった数々の名車。その後、バイクメーカーは淘汰されていくも、その技術は今も浜松に残り、精巧な部品をつくり出すものづくりの街として受け継がれていくのです。
 

浜松から始まった日本のオートバイ産業。1960年には日本での国内生産台数が世界一位となります。その後、国内市場の成熟、海外へ生産拠点を移したことで、生産台数は1981年をピークに減少。しかし、平成になるとアジア地域での小型二輪車の需要の高まり、欧米での大型バイク市場の活況など、時代の変化に則してバイク産業は今も進化を続けています。

 

バイクのふるさとに、バイカーたちが集合




「バイクのふるさと浜松」は、バイク産業やバイク文化を盛り上げ伝承していくことを目的に、毎年8月19日(バイクの日)前後の週末に行われるバイクイベントです。2018年で16回目を迎え、夏の恒例イベントとして定着しています。会場は、東名高速道路・浜松インターにほど近い、浜松市総合産業展示館。国内、国外バイク販売店によるバイクの展示、地元浜松のバイク関連企業による展示、さらにトライアルデモンストレーション、親子バイクスクールといった多彩な内容。この日のために全国から多くのバイクファンが集まります。




今回は、イベントに来場したお客さまに「バイクのまち浜松」の魅力について聞いてみました。



浜松市中区 Yさん
「夫婦ともにバイク乗りで、子どもを連れて2日連続イベントに参加しました。今はなかなか一緒にツーリングすることができないけど、子どもが大きくなったら一緒にツーリングできたらいいですね。今日のようなバイクイベントがあるとやっぱり、こころが踊りますね」



東京都八王子市 Tさん
「6時半に自宅を出てきました。このイベントはTwitterを通じて知りました。浜松といえば、バイクの3大メーカー発祥の地ですし、地理的にも日本の真ん中で、来やすいからいいですね。ツーリングでは3回ほど浜松に来ています。もちろん、うなぎを食べて帰ります」



浜松市西区 Nさん
「以前はバイクのテストドライバーとして働いていました。バイクのレストア(古いバイクを見た目にもキレイにし、修復、復元する事)もしていて、実はスズキ(株)のスズキ歴史館に展示してあるバイクもレストアしました。このイベントは、いろいろなバイクを見ることができて楽しいです。やっぱり浜松はバイクのふるさとですね」



愛知県刈谷市 Nさん
「トライアルデモンストレーションに興味があって参加しました。バイクの魅力は、なんといっても風を感じられるところです。自分も古いバイクを乗っていますが、浜松に来るとさらに古いバイクを大事に乗っている人が多くて、バイク好きが多い街なんだなと感じました」



愛知県稲沢市 Mさん
「週に1回はツーリングを楽しんでいます。次々と景色が変わっていって飽きないですし、バイクを自由自在に操っている感じが楽しいですね。地元のバイクショップのオーナーとも、浜松ではバイク関連のイベントが多くてうらやましいねと話題にあがりますよ」



愛知県名古屋市 Iさん
「昨日から静岡への1泊ツーリングをしていて、浜松でバイクのイベントがあると聞いて立ち寄ってみました。3大メーカーのお膝元らしくバイクの展示や、用品の販売が充実しているのが楽しかったですね。浜松といえばうなぎですかね(笑)。グルメ目的でツーリングに来られるのもいいですね」



袋井市 Iさん家族
「若い頃はバイクに乗っていましたが、仕事が忙しくなって乗らなくなって…。息子がバイクに乗り始めたのをきっかけに再開しました。夏は暑いですが、風を切って走るのが心地いいですね」(父)
「バイクのふるさとには何回か参加しています。メーカーのバイクが見られるのも楽しみですが、来場者が乗ってくるいろんなバイクを見るのも楽しいですね」(息子)
「私は浜松出身なので、小さな頃からスズキに愛着がありました。よその土地にツーリングに出かけると、3大メーカーのお膝元に住んでいるという喜びを感じます」(妻)




高速道路が2本もあり、国道1号線が走る浜松は、東京や名古屋、大阪などからもアクセス便利な立地。さらに、海や山、湖といった景色を楽しめるポイントも多く、うなぎや浜松餃子、ハンバーグなど、地元グルメも充実し、ツーリングにもってこいの場所。バイクのふるさとである浜松でバイク乗りが一堂に会するイベントが行われるのは、必然だったのかもしれません。

 

ものづくりの神髄を伝える「ポンポンCLUB」


展示場の一角では、「ポンポンCLUB浜松」によるオールドバイクの解体ワークショップが行われていました。「ポンポンCLUB浜松」は、本田宗一郎の偉業を称え、顕彰するボランティア団体。ホンダ技研工業(株)に勤めていた技術者である宮地武夫さんが代表となり、ビンテージバイクの展示や交流会などを定期的に開催しています。クラブのメンバーにはオートバイ作りの技術者や職人が多く、参加した小学生たちに工具の使い方を教え、往年のバイクを丁寧に解体していきます。バイクに乗る楽しみだけでなく、分解し、レストアするという、ものづくりの楽しさを伝える「ポンポンCLUB浜松」。バイク産業を支える多くの技術者や職人が活躍している浜松ならではの活動です。外国製オートバイを分解し、研究開発していた本田宗一郎のように、このワークショップをきっかけに、未来の本田宗一郎が生まれるかもしれません。




「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」というバイクの3大メーカーの創業地である浜松は、多くの技術者や職人が活躍する街でもあります。産業というのは一部の企業だけが牽引していくのではなく、名もない技術者や職人たちによる仕事の積み重ねによって支えられていることが分かります。また、モノとしてのバイクだけでなく、海や山、湖といった自然環境に恵まれた浜松は、颯爽と走るバイクの醍醐味を体感できる場所でもあります。人、技術、自然環境がそろった浜松は、これからも「バイクのふるさと」であり続けることでしょう。